物語のあらすじは以下の通り。
舞台は《FC2》共有テンプレート。
・Aさんはテンプレートを作成し、共有にした。Aさんの規約には、「改造再配布は不可」と明記してあった。
・Bさんはテンプレートをダウンロードし、HTML部分はほぼそのまま、注釈や画像など一部を変更して、共有化した。
・Aさんは、「改造再配布ですので、削除してください」と《FC2》に申し出た。
・《FC2》は、Aさんの申し出どおり削除した。
さて。誰が正しいでしょう。誰が間違っているでしょう。
《FC2》ブログの規約
まず、規約ですが。なんと書いてあるか、引用してみましょう。
□テンプレートの著作権に関して
公式テンプレートの著作権はFC2に帰属し、FC2ブログ内に限り編集を可能とし、FC2ブログ以外での使用を禁止します。
FC2ブログで作成した共有テンプレートの著作権は共有テンプレート作者に帰属し、作者の許可なしにFC2ブログ以外に転載することを禁止します。
私のようなスネ者がこれを読むと、ですね。著作権の発生する部分だけ、作者に帰属する、とも読めます。つまり、日本の法律で著作権が発生しない部分まで、《FC2》⇔ユーザー間契約的に保護する、という内容ではないように思えます。
HTMLソースの著作権
では、日本の法律は、どうなっているでしょう?
著作権法第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
(中略)
九 プログラムの著作物
プログラムは、著作権の保護を受けます。これは確定です。
ところが、これにはややこしい続きがあります。
著作権法第十条3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
■[9/10]注■テンプレート著作権と知恵蔵裁判〜いしなお様への公開私信参照のこと。
[いしなお氏]HTMLをプログラム言語ではないという解釈もありうる。だとすれば、著作権法の範疇外の可能性がある。また、レイアウトは著作権の保護によらない(知恵蔵裁判)
[麻生]サイボウズ裁判においては、グループウェアにおけるHTMLファイルにおける著作権が実際に訴訟で争われている。
■[2007/4/8]注■筆者が解法の語を誤解していたことが判明したため、文章の一部を削除した。
著作権を分けるのは、創作性
http://www.law.co.jp/okamura/copylaw/chyo04.htmより。
プログラムの著作権を論じるときにしばしば引用されるのが、「システムサイエンス事件(1989)」の判決文です。そのなかには、こんなことが書いてあります。
あるプログラムがプログラム著作物の著作権を侵害するものと判断し得るためには、プログラム著作物の指令の組合わせに創作性を認め得る部分があり、かつ、後に作成されたプログラムの指令の組合わせがプログラム著作物の創作性を認め得る部分に類似している事が必要であるのは当然であるまたこんな部分もあります。
『本体側よりデータ入力後の処理ルーチーン』の指令の組合わせは、ハードウェアに規制されるので本来的に同様の組合わせにならざるを得ない
この事件では、処理ルーチーンに著作権は認められませんでした。なぜ認めなかったかというと「同じ組み合わせにならざるを得ない」プログラムだったからです。
テンプレートHTML/CSSに創作性はないか
まず、《FC2》ブログのシステムは、一つのテンプレートHTMLしか動作しない、というような仕組みではありません。だから、「同じ組み合わせにならざるを得ない」がゆえに「著作権がない」と判断された、この裁判のプログラムと同列に扱うことはできません。
次に、これが最後の難問です。テンプレートHTML/CSSに創作性があるか?
とても漠然とした問い。哲学的、と言ってもいいかもしれません。
私は逆に、Bさんにうかがってみたい。共有テンプレートを作成するにあたって、なぜ、公式テンプレートを元にしなかったのですか? と。
公式テンプレのデザイナーさんには申し訳ない言い方になりますけれども、それはAさんのテンプレートのほうが、公式テンプレートより、何かの点で上だったからのではないですか? それは「創作性」の成果とは、いえませんか?
→2007/4/8再論あり
単純であること、複雑であること
もちろん、私も「すべての」HTMLソースに著作権があるなんてことは思っていません。
こんなの↓には、創作性がないから、著作権保護はないと思いますよww
http://homepage3.nifty.com/gaia/adankadan/kihon2.htm(あ、ひでーこと書いているようですが、いちお、自サイトですンでwww)
プログラムと、それ以外の著作物の、単純な比較は危険ではありますが。
■■■■←この色見本に著作権がなくても、ピート・モンドリアンのコンポジションには著作権があったのではないでしょうか?(1944年没だからもう切れたけど)
一つの単語には著作権がなくても、俳句にはあるでしょう?
複雑なものは、単純なものの組み合わせです。それが「唯一の組み合わせ」でない限り、多数の組み合わせのなかから、何を優先して、どう選ぶかに、独自性と創作性が出てきます。
数行のソース、あるいはスクリプトをコピーすることがOKだったからといって、数百行のソースをコピーすることが同じようにOKになると、本当にそうお思いになりますか?
■[9/10]注■
この稿を書いたときには、まだ創作性の定義についてはかなり軽易なものを考えていました。(引用枠内参照)
色々調べると、かなり厳しい判例もあるようです。(PDFファイル内を「軽易」で検索してください,平成12年9月7日最高裁判所判決/印刷用書体の著作物性)
テンプレートHTML/CSSに著作権があるとすれば。
もし、テンプレートHTML/CSSに著作権があるとすれば。作者にはその再配布の権利や使用の範囲を設定する権利があります。「誰でもコピーしていいですよ」と許諾することも自由ですし、「改造再配布は困ります」と制限する権利もあります。あるいは「これを元にする人は、改造再配布を制限してはいけません」という「コピーレフト」を宣言することもできます。ユーザーはテンプレ作家さんの規約を読み、規約の範囲でテンプレートを使うことができます。厳しい規約を守りたくないなら、規約のゆるやかな他のテンプレートを使えばいいのです。《FC2》の場合※、公式テンプレートはすべて改造自由という許諾がされているのですから、最初から共有テンプレートに参入することを目標に改造に取り組むのであれば、公式をベースにするという方法もあります。
それは、そんなに窮屈でしょうか? 共有テンプレートの発展を妨げるほどに?
誰でも改造再配布ができる「はず」として、「あんまり丸パクりの再配布はしてほしくないな」という作り手さんの参入を躊躇わせるのと、どちらが健全な発展を望めるのでしょう?
※ 余計ごとですが、他サービスでは、公式のテンプレートのなかにもCSS改変窓が開かないよう設定したものがあるところもあります。
私個人は、この数日、著作権法を読み返し、判例をあたって、テンプレートHTML/CSSにはやはり著作権保護があるだろうと考えるにいたりました。もし、どなたかがこれを読みつつなお「改造再配布禁止テンプレートの丸コピ・丸パクり再配布」という冒険を実行なさるのであれば、少なくともご自分がコピーしたものに「創作性がない」と断言できるだけの論拠を持っていただきたいと、まぁ、そう思う次第であります。
■[9/10]注■
このあと、いしなお氏との議論、TMP*Blogころ氏との議論を経て、私の考えはニュアンス的にかなり変わっています。
『想いを盛る器〜テンプレート著作権シリーズの終わりに』を御覧下さい。
■[9/11]追記■
9/11追記:こんなもん拾いましたorz
http://homepage3.nifty.com/nmat/cnGohou.htm
和解のあとまでゴタゴタだったのね>サイボウズ