当方は、現在、テンプレートと著作権に関する仮想的なケースに取り組んでおりまして、これに関して、ネット上の文献や記事を読み漁るなかで、いしなお様の表明が一番わかりやすく、それゆえになぜ後になって変更なさったのかが私にはよく理解することができませんでした。勇気を出して、TB差し上げる次第です。
仮想ケースは以下のとおりです。
《FC2》ブログには、共有テンプレートというシステムが存在します。ユーザーは、《FC2》の変数等諸設定に従ってテンプレートを作成し、《FC2》の審査の上、他のユーザーの使用に供することができます。金銭の取引は介在しません。強いていえば、名誉のみです。
《FC2》は、規約で「共有テンプレートの著作権は共有テンプレート作者に帰属」としています。
「他人が共有登録したテンプレートのHTML部分を丸パクリし、CSSで画像や色/カラム幅などを多少変更して、自作としてテンプレートを登録した場合」に、著作権法違反に問えるかどうかを、考察したいと思っております。
「デッドコピーおよびそれに類するもの」と「一般的なTIPSレベルの要素を部分的に借用」した場合を分け、前者のみを抵触となさった記事や、「(特にWebアプリケーションの一部として使われる場合は)プログラムの著作物として」著作権保護下に置けるだろうとなさったコメントは、グループウェアのなかのHTMLファイルの著作権を争ったサイボウズ判例に照らしても、納得できると感じました。
ところが、後になって、『知恵蔵』裁判を根拠に意見を変えていらっしゃることを知りました。
この判例においては、レイアウトフォーマット自体に独立した著作権は認められない、という結論が下されたわけです。
そこから敷衍すると、あるコンテンツに対して構造表現やレイアウトなどを行うために作成されたHTMLやCSSコードに関しても、そのHTMLやCSSコード自体に独立した著作権は認められない、という可能性が高いと考えられます。もちろん内容によっては、HTMLやCSSによって構成されたコード自体に著作物性が認められる可能性はゼロではありませんが、一般的なHTMLやCSSの使い方の範疇においては、上記判例を判断基準として採用するのが妥当でしょう。
知恵蔵裁判は、朝日新聞社の『知恵蔵』に関して
・朝日新聞社が、ブックデザイナー鈴木氏に、「知恵蔵」のブックデザインとレイアウト・フォーマット用紙の作成を依頼。
・ブックデザイナー鈴木氏との契約が切れたあと、別のデザイナーにレイアウト・フォーマット用紙の作成を依頼して、使用。
・ブックデザイナー鈴木氏は、契約が切れた後に使用されていたレイアウト・フォーマット用紙が、鈴木氏が作成したレイアウト・フォーマット用紙とそっくりであるとして、著作権法違反で、朝日新聞社を訴えた。
という事件であると認識しております。
判例を読むと
(レイアウト・フォーマット用紙が)知恵蔵の編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情のない限り、それ自体に独立して著作物性を認めることはできない。
控訴人は、本件レイアウト・フォーマット用紙は被控訴人から独立したブックデザイナー固有の知的創作物である旨主張する。しかし、年度版用語辞典である知恵蔵のような編集著作物の刊行までの間には、その前後は別として、企画、原稿作成、割付けなどの作業が複合的に積み重ねられることは顕著な事実であるところ、本件における前記一認定の前提事実に照らすと、本件レイアウト・フォーマット用紙の作成も、控訴人の知的活動の結果であるということはいえても、それは、知恵蔵の刊行までの間の編集過程において示された編集あるいは割付け作業のアイデアが視覚化された段階のものにとどまり、そこに、選択され配列された分野別の「ニュートレンド」、「新語話題語」、「用語」等の解説記事や図表・写真を中心とする編集著作物である知恵蔵とは別に、本件レイアウト・フォーマット用紙自体に著作権法上保護されるべき独立の著作権が成立するものと認めることはできない。
等と書かれています。(下線は引用者)
つまり、これは『知恵蔵』の著作権者である朝日新聞社と、朝日新聞社から発注を受けていたブックデザイナーの間の裁判であるからこそ、「独立した」著作物性が認められないとされたのであって、たとえば、朝日新聞社ではない別の出版社が同一のレイアウト用紙をコピーして使っても違法性がないと読むべきなのかどうか、私にはどうしても理解できません。そして、当方が用意した仮想ケースは、「別の出版社が同一のレイアウト用紙をコピーして使った」のに近いと、考えております。
ご助言を賜れば、まことに幸です。
当然のことですが、お忙しかったり、あまりに程度が低いとお感じになりましたら、このままご放念くださいませ。
[自メモ]
著作権で保護されなくても、民法不法行為で保護されることもある、という展開も考えたが、《FC2》規約が著作権しか規定していないので、とりあえず深追いしない。
ishinao様にコメントをいただいたのですが、秘信扱いになっていましたので、ここに転載します。(経緯はコメント参照で^^)
こんにちは、ishinaoです。すでに記憶の彼方に飛んでしまった件ですが、うろ覚えの記憶をたどって返事を書いてみます。
『論議を呼ぶフォーマットの「著作権」(http://www.linelabo.com/chi99714.htm)』というページには、知恵蔵裁判の朝日新聞社側代理人弁護士に対して、
> 1. 一審・二審を通じての最大の争点は、「レイアウト・フォーマット」の著作物性の有無、と考えてよろしいでしょうか?
> 2. 「レイアウト・フォーマット」に関しては、朝日新聞社にも著作権が存在しないとの主張と理解してよろしいでしょうか?
> 3. 「レイアウト・フォーマット」には、どのような権利も認められないとのお考えでしょうか?
> 4. この裁判には、どのような意義があるとお考えでしょうか?
という質問状を送り、以下の回答を得た旨が書かれています。
> 1. ご質問のとおりです。
> 2. そもそも本件「レイアウト・フォーマット」は著作物ではないので、当然、朝日新聞社も著作権を持ち得ないとの立場です。
> 3. 著作権等の知的財産権は発生しないと考えております。
> 4. 朝日新聞社側としては、著作権法の一般的解釈に基づく当然の主張をしておりますので、特段意義があるとは考えておりません。
つまり、朝日新聞社の訴訟代理人である弁護士の方が「たとえば、朝日新聞社ではない別の出版社が同一のレイアウト用紙をコピーして使っても(著作権法上の)違法性がない」と回答しているわけです。
こういう判例がある以上、「出版物における各ページの文字組み、1行の字数、行数、行間、段間等を定めたもの」に相当する、HTMLコードやCSSコード(の本文を除いた部分)に関しては、独立した著作権が認められる可能性が少ないだろう、と判断した次第です。